地下鉄サリン…もう23年

今日は例の地下鉄サリン事件があった日だった。もう23年なのか。遠い昔みたいでもありながら記憶は鮮明だ。事件の犠牲者の冥福と関係者の生活の平穏とを心から願う。今になって振り返るとオウムの恐ろしさも解るんだが正直なことを言えば当時のオウムは恐ろしいテロ集団というより一種のイロモノ組織として笑いのネタになっていた。確かにオウム・ソングも流行っていた。もちろんオウムが危険な要素を孕んでいたことは誰もが認識していただろうけどテロはオウムの多様な側面の一つくらいにしか見られてなかったんぢゃないだろうか。この事件は日本人の意識や価値観に様々な変化をもたらしたと言われる。日本人の宗教観を根底から変えてしまったのも一連のオウム事件だった。オウムが仏教を自称し特に密教ヨガを前面に出していたので元々から世間一般に認知されず場合によっては不当な評価を受けてさえいた日本密教は余計に肩身が狭くなった気がする。さすがに当時は仏教やってるなんて人には言えなかった。あのころは色々あってオタクも隠れキリシタンさながらに肩身が狭くて宗教なんか信じている人間は当時のアニメ・オタクや鉄道・オタクと共に息を潜め
ながら正体を隠して暮らしていた。今から考えるとウソみたいな時代だった。噂によればアニメ・ファンの立場は今の方が危ういんだとも聞く。アニメの話題も気軽に出せる普通の話題ぢゃないらしい。そう言えば当時は各地のトンコツ・ラーメン屋さんもオウムのせいで往生していたっけ。中には風評被害で廃業を余儀なくされた店もあった。噂は拡大し近くの郊外型の蕎麦屋の店員の声が小さいってんで警戒されたりする始末。自分が知っているなかで最も可哀想だったのは関東某所にあるラーメン屋さんだった。ご店主は元々インド好きで店も全体にインドっぽい雰囲気に統一されていた。オウム事件の衝撃も薄らいだころに久しぶりに顔を出してみると懐かしいインド色は跡形もなく払拭されていて普通の凡庸な感じのラーメン屋さんに変わっていた。それを見ただけで一切の事情を察すればよかったものを当方は不用意にも以前のインド趣味の話題を出してしまった。ご店主は物凄い表情で当方の言葉を止めた。自分の失策を理解したら一瞬で血が凍った。それから店を出るまで一言も言葉が出なかった。オウム以降に店に何か起きたかは想像してみるほかないが相当に壮絶な感じ
になっていたにのは間違いない。それからは申し訳ないわ立場がないわで店には足が向かなくなってしまった。たまに懐かしくなって行こうと思うときもあるが例の凍りついた空気が蘇ってしまう。あれから何年。もう20年なのか。