こちとら風情で食ってるんでえ

食い倒れの関西、食い物をめぐるスキャンダルやら騒動やらも関西の方が賑やかな感じがします。今回の阪急・阪神ホテルの偽装表示疑惑で、懐かしの船場吉兆を久しぶりに思い出しました。あの雪印騒動も考えてみたら関西発だったんです。こうゆう事件が起きると世間では怒りのコメントばかりが出て参りますが、どうも小生はそんな感じにはなりません。元々そんな高級店とは無縁なせいもありますが、むしろ、食い物なんてのは初めから風情半分の世界だとタカをくくっているからなんです。おーおー!てあんでえ!こちとら風情で食ってるんでえ!毒入りや正体不明の食い物でも出されたワケでもあるまいし、何をそんなに…という心です。例えばギンムツという魚が分類上ムツの仲間じゃないからとか言って魚屋を糾弾いていたバカもいましたが、こうゆうネーミングは基本的に食感の類似性から生まれたもので、いわば風情の話なんです。蕎麦屋の鴨南蛮だってキジ丼だってインチキに相違ありませんが、それで何かあるという話にもなりません。どうせ偽装疑惑で怒っている人に限って、やっぱりホンモノは違うざあます!とか言って食ってたんです。所詮は風情、そこで金返せというのは野暮で卑しくて、さもしくて貧乏臭い景色だと感じてしまいます。咄家の志ん生さんの川柳にも…鯛飯は鱈だと聞いてマズくなり…なんてのもあります。ウグイスパンにだってウグイス入ってない
でしょ!もちろん今回のケースみたいに高級店でインチキ料理を出しておいて高い料金を取るというのがイケナイというご意見も成り立ちますが、そうゆうところに行くお客にとっての代金は小生にとっての鯛飯代と同じようなもんになるワケで、風情で食ってる限り事情は同じです。食ってマイウ〜なら少なくとも小生にはモウマンタイ=無問題なんであります。それにしても人間の記憶システムには独特の動きがあるようで、普段は忘却の彼方で眠っているような意外なキーワードがガバチョと飛び出して参ります。今回は思い出して自分でもビックラこいたのは、「南野農園」でした。あれは何年くらい昔の話だったでしょうねえ。確か菅さんが厚生大臣だったときです。南野農園といえばカイワレが日本全国のお店から姿を消したあのときに、食中毒の火元といわれた会社です。あの会社、いったいどうなったのでしょうか。そもそもそれ以前に食中毒の原因がカイワレだったという話には本当に根拠があったのでしょうか。思い出せば思い出すほど、モヤモヤして参ります。カイワレ事件、小生の記憶のなかでは、代表的なウヤムヤ事件の一つになっています。あのときは駅
前の激辛ラーメンに乗っていたカイワレが見事に超細切りネギに変わっていました。そういえば近くのスーパーに行ってカイワレを密かに売ってくれまいか?と面白半分に打診してみたら、段ボール一箱20円でいいよ!ということになり、馬鹿デカい箱を3つも抱えて商店街を通り抜けた思い出があります。しかしカイワレというヤツは食い方を工夫してもそう食えるもんじゃありませんでした。いや、だいたい食い方に工夫なんかできないシロモノでした。あのカイワレのない季節、すっかり忘れておりました。あれは一体何だったんでしょう。