暑い!だからアルハンブラの快楽

世間では暑いから冷房する。冷房するから周りが暑くなる。周りが暑くなるから冷房を強くする。今のところ幸い聖地は暑い日でも午前中には風もあって涼しいので救いがあります。勉強は涼しいうちにとか。買いだめしてある本を爆読みします。さて所感: 「あのギチギチ・ハウスは見てるだけて腹が立ちますよ!」ある女が住宅街の家々を指差しながら激怒して言った。同感であります。最近の個人住宅は蓄熱性の高い素材で作られているうえに敷地面積いっぱいに建てられているので妙に圧迫間があって見た目にも暑苦しい。しかしホントは見た目だけでは済まない話がある。なにしろ敷地ギリギリだから日除けとなる軒がないに等しい。しかも場合によっては庭木も植えてない。実は吉田兼好のヤツが言うように日本では家を作るなら夏場モードで考えた方がいいようだ。確かに日本の伝統的な家屋は夏向きの作りになっている。まず夏を乗り切るには日陰と風とが積極的に利用される。そのための画期的な装置が「軒」なのだ。仏教寺院なんかは深い軒のデザインを採り入れているが例えば急角度で上から襲ってくる夏場の日差しを軒によって避ける一方
で水平に近い角度で差し込む冬の日差しは屋内に取り入れることができる。しかも屋根の傾斜によって気流が導かれ夏場は軒下に風が入る仕組みになっている[ついでに冬場は北風さえ避けられれば軒は保温装置として機能する]。たしかに暑い暑い砂漠の国で練り上げられてきたイスラム建築の知恵も中庭の開放型回廊というデザインを考えだした。四角い池を中心に作られたアルハンブラ宮殿の景色なんかはホントに[写真を]見ているだけでも気持ちいい。片や余裕のないギリギリの経済事情のなかで産み出された現代日本の「普及型」住宅では予算ギリギリの条件下で最大の居住空間を確保するなら軒なんか着ける余裕もない。おまけに鉄筋コンクリート造りになると法的に隣家との距離を大きく取らないでよくなるので夢のマイホームは宿命的にギチギチで暑苦しい箱にならざるを得ない。この蓄熱性と気密性の大きい素材と空気の流通しにくい構造の暑い暑い箱では冷房なしには[まぁ]暮らせない。こんなんがギチギチに密集しているのだから住宅街の景色が暑苦しいのは当たり前だろう。さて聖地の町外れに何代も続いている小さな個人病院
があるのだが東向きの入り口横の深い軒の下には涼しげな木製のベンチが並んでいる。不思議なことに同じベンチが冬場には温かく見える。実は物凄く心地よいデザインなんだが当たり前にあるので誰も不思議に思わない。さぁもし今あなたが持ち家を考えているなら快適な夏と温暖化防止と人間的コミュニケーション回復なんかのために半開放型居住空間の導入を検討されませんか?暑苦しいエビ宮殿のなかからの提案です。