ライフライフとジャミラ

相棒シリーズ10の4が再放送されていた。タイトルは「ライフライン」。これは相棒シリーズの中では忘れられない作品だった。物語は刺殺された町工場の社長が莫大な借金の他に残して行った寺泊に当てた荷物の送り状を写した写真。その背景にあったのは資金繰りに苦しむ運送会社の現状。経営者たちはヤミ金からの借財を返済するために同じ状況下にある経営者仲間に対する取り立て業務を請け負わされている。取り立てる方も取り立てられる方も死を覚悟するまでに追い詰められながら綱渡りのような毎日を送っている。運送会社の抱える現実が明らかになるにつれて社長の死の真相が浮かび上がる。取り立て業務を続ける社長は罪の意識に耐え兼ねて仲間に自分の殺害を懇願する…。携帯に残されていた写真は社長が遠い昔に離れた故郷経誰かが送った荷物の送り状だった。誠実なるがゆえに蟻地獄のような残酷な境遇に追い込まれる人たち。本来なら助け合っているはずの仲間を不本意ながら裏切り苦しめなければならない皮肉な運命。もう万感極まる。涙は見せないが泣けて泣けて胸が苦しい。「ライフライン」と同じように一話簡潔のドラマ・シリーズには忘れられない回
があったりする。おそらくエビと近い世代だったらウルトラマンジャミラの回は決して忘れられないはずだ。あれは日本中の子供に決定的な衝撃を与えたに違いない。もうウルトラマンジャミラも可哀想でならない。あのときテレビの前にいた子供たちは今なお苦しむ他人を見たときに平気な気持ちで素通りできない大人になっていると信じたい。ジャミラ以外にも個人的な記憶に深く刻まれたのは「魔法のマコちゃん」の「海の響き」という回。それは公害に汚染されてしまった海に面する町での物語だった。廃液を垂れ流す企業との戦いに敗れ死んでいこうとする元漁師の老人のために主人公のマコちゃんは魔法で以前の豊かで美しい海辺の町の風景を見せる。美しい幻想の中で希望を回復した老人の意識が死だ卯に薄れていく。「魔法のマコちゃん」は社会派なアニメだったのだ。「ウルトラセブン」の「ノンマルトの使者」や「ウルトラマン・ティガ」の「宇宙少年」の回も忘れられない。他にも「モーレツあ太郎」「ゲゲゲの鬼太郎」「仮面ライダーV3」…と色々あるのだが小さいときに得られた上質の感動は確かに今なお一つの生きる上での財産になっている。たぶん少し
下の世代の子供たちにとっては「フランダースの犬」の最終回が同じような財産になっているのだろうか。