仮面で神に変身する

秋田のナマハゲや奄美のトシドン。仮面訪問神が世界遺産に登録されたとや。このような仮面と仮装によって神々になった人が村を訪問するという営みは日本だけでなくニューギニアなどの南の島々でも盛んに行われているらしい。日本では様々な方法で人が神になる。その中でも仮面を着けたり仮装したりすることは人が神に変身する最も効率的な手続きだったと言えるかも。しかも日本では仮面によって変身する神は一般的に古事記の体系には入らない土着の神々だ。そういえはハロウィーンが自然発生的に巨大化していった背景にも仮装による日本人の神化のメカニズムの絡みがあったのか。ユングの「ヴォータン」ぢゃないけどハロウィーンの夜の渋谷では祝祭的な空気によって非日常的化された時空間と仮装という伝統の変身アイテムのチカラが若者たちの中に眠っていた神々を図らずも一時的ながら目覚めさせたのかも知れない。渋谷で目覚めた日本の神々の大多数は普段は抑圧されていた土着系の笑いと賑わいの神々だったと推察できるが神々の中には荒振る神々が混ざっていても全く不思議ぢゃない。
もしも今度の渋谷の夜の度を越した狼藉が仮装のチカラにより目覚めた荒振る神々の所業だったとしたら被害者には後で思いもよらない福が授かる決まりなのだが…。
現代の若者の狼藉には何の福が期待出来るかは不明だ。とにかく偶然に渋谷を通過して被害に遭った方は酷い災難だ。もう荒振る若者に乗り移った神々の配慮を願うばかりだが被害者には改めて心から同情する。でも人が神々になるのは宗教心理学的には望ましいことだ。誰もが無難な仮面の下に色んな気持ちを隠しながら生きている現代の日本人なら暴力や不寛容なんかに走る代わりに時には神々に変身してみるのも悪くないよな気がする。