ホトトギス

anesti2013-02-02

ウグイスに申し訳ないホトトギス
 ホトトギス・シリーズもこんなに続けられるとは思いませんでした。まだまだ行きます!今日も特に変わったこともないので、それを良いことに日頃から書こうと仕込んで置いたネタを出してみます。
 今回はついにホトトギスについ書きます。
ホトトギスは夜鳴く鳥です。終電もなくなった真夜中にガード下なんかであの声が聞こえると一瞬ですがゾッとします。朝などにもその声が聞こえてきたりしますが、あれは言わばお勤め帰りのホトトギスの歌のようです。この夜鳴く鳥、しかも名前が妙にガイジンっぽいのが気に障ります。それもそのはずで、この人の名前は外国語らしいのです。「十王経」という、中国で生まれたニセモノ仏典にホトトギスという梵語=古代インド文語の名前の鳥が出てくるのです。この鳥は三途の川の畔の木の上に住んでいて、死者が川を渡ってくるとそれを鳴いて知らせるのだとか。しかしホトトギスという名前が本当に梵語なのかは未確認でして、これは機会を作って確かめたい気持ちでいます。
 本物のホトトギスという鳥はカラスやツバメのように都市部で日常的に見られる鳥ではありません。一般的には里山近くに住む鳥です。主な活動期は夏ですから、「目には青葉山ホトトギス初鰹」なんて俳句でも初夏の風情を表す題材として利用されています。ホトトギスは声の良いことでも知られていて、野鳥に接する機会の少ない都市の住民あたりは時々ホトトギスの声をウグイスと聞き間違えたりします。「その声でトカゲ食うかよホトトギス」なんて川柳とも俳句とも付かない句も残されているくらい声が良いのです。「鳴かぬなら〜」の喩えからも声の良い鳥の代表みたいになっているのが解ります。
 しかしホトトギスの最大の特徴は「託卵」と言われる行動をする点にあります。託卵とは、別の鳥の巣に卵を産み付けて、その雛鳥の巣立ちのときまで世話をさせることで、この習性は高原の爽やかな朝がよく似合うあのカッコーやその仲間のツツドリ(こちらの声はちょっと…)にもみられるということです。あのカッコー、意外とそういうヤツなんです。
託卵の嫌らしさは、単に子育の放棄という一種の倫理的な問題だけでなくターゲットになった鳥に対して実害を及ぼすことです。ホトトギスのばあいターゲットはウグイスという話です。雛鳥は喉の色が、ウグイスの雛鳥より目立つ感じになっており、ついつい親鳥がホトトギスの方の世話を優先するように仕向けるのです。おまけに体の大きさも成長するにつれてウグイスの雛鳥を追い越してゆくのです。そして最も嫌らしいのは巣が手狭になるとホトトギスの雛鳥は同じメシを食って育ったウグイスの雛鳥を本能的に巣から押しだして突き落とすことです。何も知らないウグイスの親鳥はそれでも誠実に自分の責務を最後まで果たすのだそうな。このタカリ行為は共生ではないらしく、ウグイスの親鳥には何のメリットもないようです。自然界は不可思議です。生態学は動物の利他的行動が生態系のバランスを保つために役立っており、損をしている種も結果的に利得を得ているというイメージで自然界を捉えているようです。最近話題になった「働かない働き蟻」も、不測の事態や繁忙期に備えてストックされたフリーのスタッフだとのことです。非効率的な行動をしているように見
える動物たちですが、「いいよ、いいよ、心配ご無用!これでいいんだよ」なんて感じて人間に教えてくてれているのかも知れません。
それにしても小生、ナゼこんなに鳥の話に熱が入るのでしょう?白状しますが、実は小生、むかし山科鳥類研究所にお勤めだった、ある高貴な方の……熱烈な……ファンだったというワケで…。
叶わぬ恋は知識の領域だけを残して消えてゆくのです。