責任は問いません!

anesti2013-02-09

インチキなウグイスじゃないホトトギス
かつてVOWとかいう変なムックがありました。もしかしたら今でもあるのかも知れません。街で見かけた変なモノが色々出ています。現代風に言えば珍百景本ということになります。
 例えば道路上の標識にに「トマレ」の代わりに「トレマ」、怪しい例ではラーメン屋さんの前の看板に「ラーメン タンメン ザーメン」とか…。
小生、こうしたネタは大好きなのですが、残念ながらこれまでVOWに載せたいような変なモノには出会えていませんでした。しかし某所の駐車場の横に立っている看板が極めて変なことを数年前に初めて意識しました。あまりに普通に立っていたので、その異常性に気が付かなかったのです。文面を確認します。
「関係者以外の駐車をお断りします。又、駐車場内でのトラブル・盗難の責任をといません」。特に変わったところのない普通の掲示です。意味も通じます。ただ問題は最後の一文です。看板には「トラブル・盗難の責任をといません」と書いてあります。そうなるとこの駐車場では「泥棒はウハウハ!利用者はヒヤヒヤ!」みたいな状況が展開しそうです。それでも実際にはこの看板のせいで特に深刻な事態が発生したという情報は今のところ入っていません。
人間の情報処理能力とは物凄いもので、インプットされる情報に多少の欠損や乱れがあっても自動的に補正されカバーされます。まあ時にはこの能力のせいで誤解が起きたりするのですが、普通の生活のレベルでは恩恵の方が大きい感じです。だからこそこの看板が町の話題をさらうこともなかったのだし、小生のレーダーにも引っ掛からなかったワケです。
しかしナゾはまだ残ります。ナゼこんな文面が出来てしまっのかというナゾです。考えているうちに、誰かのエッセイに出てきた「骨を伸ばす」というナゾの言葉を思い出しました。あるエッセイストの身近にいた人が「温泉にでも行って骨を伸ばそう」とか言ったそうなのですが、確かに何か変です。言いたいことは「リラックスしよう」ということだと解りますが、どこか妙な感じがします。エッセイストも考えました。そして一つの答えに到達したのでした。そのナゾの言葉の正体、それは「骨を休める」と「羽を伸ばす」が情報処理過程で混線した結果だというオチでした。
「藁をもスガる」とか「ケンケンガクガク」とか、こういう言葉の混線は他にも見られそうです。話を温泉から駐車場に戻します。「責任をといません」も「骨を伸ばす」と同じメカニズムで説明できそうです。このナゾの文面の正体、どうやら「責任をとりません」と「責任をおいません」との混線だという結論になるようです。
我々は小学校以来、自分の意識を正しく表現するように訓練されてきました。そして正しい表現をすることが正しく意識を伝えるための条件だと考える習慣を身に付けてきました。そんな常識のなかに暮らすうちに正しく表現できない人は低レベルな考えしかもっていないと錯覚し勝ちになります。
 意味のある言葉、確実に通じる言葉だけが飛び交う現代社会ですが、余裕と暇がある時には、少しだけ人間の情報処理能力を見直してみても良いように感じます。貴兄の身の周りにも実は物凄い見解をもちながら沈黙を続ける仲間がいるかも知れませんぞ!