テレパシイ

「○○さんとこには石の印鑑を上げたことがあった」

「○○さんっていえばねえ、タイで買ってきた大きいツボを上げたことがあってねえ」


 昨日の不思議な話のついでに一席。最近こんな話を聞きました。これはたった一度だけ海外に旅行したときの母の体験です。時は懐かしいバブル末期、行ったところはタイでした。バンコクの街をどこへ行くともなく歩いていたら、ある工芸品店の店先に置いてあった大きくて真っ白いツボが目についたのだそうです。普段はツボなんかには興味も関心もないのに、そのときに限って妙にそのツボが気になって結局その場で当時の日本円にして20000円くらい出してドーンと買ってしまったのだそうです。元々誰かへのお土産にしようと思って買ったとはいえ、なんでそんな高くて大きなおシロモノを買ってしまったのか、いまでも理由が解らないのだそうですが、母というのが衝動買いなんぞは夢にも思い付かない人間なだけに聞いていた小生も不思議に感じました。さてさてそのバカに大きな白いツボ、結局は懇意にしている自動車修理屋さんの家に上げることになりました。ところが、その家の奥さんがそのツボを見るなりビックリ、そして大喜びなのです。話を聞くとこうゆうワケでした。ここのご夫婦は何回も海外旅行に行っていたのですが、タイにも行ったことがあるそ
うです。そこで奥さんが気に入ったツボを偶然に見つけたのですが、少し高いし荷物にもなるし、どうしても欲しかったのを泣く泣く諦めて日本に帰国したのだそうです。そこへタイのツボのお土産です。しかし奥さんがビックリ仰天した理由は、タイ土産がツボだったということではなくて、今目の前にあるそのツボが実にあのとき街角で偶然見かけたそのツボだったからです。しかもツボといってもバンコク中にゴロゴロしているような平凡なものではなかっただけに不思議さも二倍だったそうな。この出来事は奥さんの念力か何かが母に感応でもしたために起きたのでしょうか。何となく人間同士の間に厚い壁が形成される一方に見える時代、嘘や気休めでもいいですから、そんなこともあり得るかなと思っておいた方が楽しい気がするのです。如何でしょう。いくつかの偶然が重なって一つのツボがそれを欲しがっていた人の手元にやってきたというお話でした。