多層構造をもつ条件反射過程について

先々週の金曜日に初めてセミの声を聞いたのに数日すると山は暑苦しいクマゼミアブラゼミの騒音て一杯です。確か聞いた話ではクマゼミという野郎は世界で一番ウルサイ昆虫なのだそうな。そうなるとアブラゼミだって2位か3位辺りにランクインしていそうな感じです。セミといえば変なことがあるのです。本を読んでいるときなどにヤツらの騒々しい声を聞くと、ナゼか心が焦りの気分に支配されます。どうやらこの感覚は大学時代、それも1、2年のころ、つまりバカ真面目に勉強していたころに出来上がったようです。夏休みは犬がエサ食うみたいに勉強していました。大量の専門書も、その内容など意にも介さず読みまくったもんです。長い長い夏休み、当時はセミが騒ぎ出す前の7月アタマに始まっていたせいか、セミの声が広がりだすにつれて「時間が足りない!」という実感がだんだん強まってくるのでした。やはりこれは大学に(苦節○○年で)入学する以前には全然なかった感覚で、それ以前はセミセミでもツクツクホウシのヤツの、あの落ち着かない声に強烈な焦りを感じるのでした。これは明らかに小学生のころに形成されたものです。ヤツ
らの声は、今でも日本中の子供たちに夢の季節の終わりが近づいたことを宣告しているかのように響いているに違いありません。しかし現在の段階で小生が悩ましいのはセミからの二段階攻撃です。まずクマゼミアブラゼミ連合軍が派手な攻撃を開始し、続いてツクツクホウシ軍が巧い具合?で波状攻撃を仕掛けてくることです。いわば二層構造の条件反射による心理的動揺が実現するというワケです。焦ります。焦るといえば、もう一つ大学時代に身に着いた無意味な条件反射があるんです。それは夜に聞く踏切のカンカンカンというあの音に誘発されるのです。しかも特定の私鉄沿線で聞こえる音にです。事情はこんな景色になります。学校が郊外移転したあとのことでした。そのころは電車を何度も乗り換えて2時間半くらいかけて大学に通っていましたが仲間と飲んだときなど、家も遠いのだから早めに帰りゃあ良いものを、時間ギリギリまで根性で粘るのが常でした。限界まで居座って、あとは死ぬ気で駅にむかって夜の住宅街を(自分なりの最高速度で)走り抜けて行きます。駅付近に到達すると決まって踏切の音が聞こえてきます。今の電車を逃したら最終に乗り
込むのは絶望的になる!そんな思いで忍者屋敷みたいな構造の駅に駆け込みます。そして努力拙く最後の希望となる電車を見送ったことも何度となくありました。しかし、何と言いますか、ひと気のない夜更けのホームに呆然としてチカラなく立ち尽くす青い顔の男!こっちも十分に怖い景色です。今でもあのとき感覚やら心理状態が消えずに残っていて、所用でその私鉄沿線に行ったときな
ど、時々顔を出してきます。あの踏切の音が急に聞こえだすと不意に全身の血がワヤワヤと抜けていくような身体感覚が蘇ってきたりするのです。人間は万物の霊長とか申しますが、心の深層には今もパブロフの犬が住んでいて、何か条件反射を誘発する解発刺激を受けるや、もうTPOもクソも考えぬままに迷わずワン!と吠えるのでしょう。ワン!貴兄には如何なる条件反射が形成されているでしょうか?