お目が高い!

先月末に店じまいした町の古本屋さん、よく不思議なことがあって、何年も動かずに置かれていた本が、さあて明日あたり買いましょうかと決意した途端にナゼか売れてしまうのです。「ここにあった本、売れちゃったんですねえ」なんて情けなく確認すると、「ええ、昨日」とか「はい、ついさっき」なんていう答えが返ってきます。これは別の古本屋でも時々経験したことです。コリン・ウィルソンの「オカルト」の一巻本とか、自由国民社の「世界の神話総解説」とか、中原淳一の「すたいるぶっく」とか、○○町教育委員会編の「○○町の歴史」とか、その他色々…まさか誰も手を出すワケないよね、という本だけに不思議です。これもユンク心理学でいうシンクロニシティ体験の一種なのかも知れません。こんなことが頻繁に起こるので、こりゃ買うのは今だという本は速攻買おうと心がけますが、やはり変なタイミングで先を越されるのでした。。こうゆうときには、ああ不思議だとか、ああ悔しいとか感じると同時に、「よっ!お客さんお目が高い!!」みたいな妙に明るくて爽快な気分になったりします。この町のどこかに同じような変な趣味の人物がいるというのは確かに
楽しいことで、名も知らぬ同志を得たような気分です。逆に小生が迷わず買った本に同じ気分を味わった人はいたものでしょうか。クロード・ブレモンの「物語のメッセージ」やら団池田の「芸能界本日も反省の色なし!」やら…まあ迷わず買っても誰も悔しがらないし、誰も困らないと思えます。さて9月に入り古本屋さんにあった膨大な本が少しずつ専門業者に引き取られはじめました。どんな本が引き取られて、どんな本が残ったのか気になります。興味本位でお店のなかを見せて頂くと、さすが専門業者!お目が高い!と実感しました。日本児童文学館の「名著復刻シリーズ」なんかは早速片付いていました。しかし、これはある意味では驚くには当たらない話でした。本気で驚嘆したのは、恐らく開店以来ずっと店の書架の一番高いところに色んなジャンルの本に混ざって放置されていた「沖中内科診断学」が見事に姿を消していたことでした。沖中内科書、それは現代医療が検査→処方/処置という非人間的なルーチンワークの系になる以前まで医学者には必読の一冊だった古典的な名著で、いわば医学の秘伝書みたいなものだったのです。この古〜い本は医師が患者の体を直に
観ていたころに読まれていた本ですから小生にはドエラく気になる本だったんですが、専門業者も手を伸ばすほど有難いものだったとは知りませんでした。でも業者が置いていった多く本のなかにも、物凄く面白い本がありそうです。まだまだ店の奥の書庫には在庫品があるとか。せっかくなので今日も「私は指をつめた女」「建築実用用語集」その他を買って参りました。