神田で知った一子相伝な世界!

先週末は所用で都内に入りました。またまた神田神保町まで足を伸ばしました。神保町というと店主がイジワルな古本屋が蟻地獄みたいに待ち構えているので、こちらの方には近づかず馴染みのお店に直行しました。この辺りにも小生の馴染みのお店というのが何軒かあるんですが、お店の人が小生をご存知かどうかは疑わしい話です。そうゆうお店のなかでも中国関係の○東書店は非常に親切で居心地が良い所です。この神田界隈では古本屋と同様に専門店に限って素人に不親切!というのが、小生の所感なんですが、ナゼか○東書店など中国図書専門店(の大多数)は。例外的なんです。さてさて、特に○東書店が気持ちいいのは、だいぶマヌケな問い合わせにも機動的に、そして親身になって対応してもらえる点かと思います。まあ○東書店は健康的な商売屋の心をもっていると言えます。例えばこんな質問!シンガポールの華僑文学の本なんかありますか?、ついでに中国で出たラテン語の文法書ありますか?なんてトンデモないことを訊いても速攻あの手この手で調べてくれるんです。しかしこりゃ自分でもドイヒーだと思うんですが、先日は自分では軽い気持ちで発射
した問いかけが、実は超ド級のマヌケな質問になってしまったんです。その質問ですが、「あのう…清の時代の公文書の読み方が勉強できるような本なんですがぁ…」。さすがの○東書店さんでもこの時の答えは「いやあ、急に訊かれても、ちょっと…」でした。いくら馴染みの店員さんとは別の人とはいえ、そうゆうお気持ち物凄く解ります。こりゃアカン!気を取り直して「ええと…公文書に現代語訳が付いたようなもんでも…」と譲歩しました。それでもやはり「いえー、公文書の資料ならたくさんあるんですけど…入門書は…」。そして店員さんの優しい説明で小生の目の前のモヤモヤが一瞬にしてスッキリ晴れてしまいました。考えてみたら当たり前みたいな話ですが、古代中国の公文書なるものを買いにくるお客様は歴史家とか文献学者とか、とにかく超オタクな専門家に限られていて、おまけにこうゆうお客様の予備軍というのも大学院の授業で丁寧に読み方の指導を受けるから、この世界には入門書が存在しないというナルホドな景色なワケなんです。一般に語学書だったらマルタ語でも、ラトビア語でも文法書くらいはあるのですが、漢文の場合は公文書が盲点みたいにな
っていたのでした。まあラテン語でもギリシャ語でも事情は似ていて、文典や文法書は大量に出ていても、確かに例文は歴史文学とか古典文学とかから引かれています。つまり古代語については21世紀に入ったコンニチでさえも、全ては象牙の塔、つまり大学のなかで昔の徒弟制度よろしく密かに、密かに、一子相伝されているのでした。こうゆう感じで恐ろしく需要が限られた分野には外部の人間には全く情報が発信されない例が色々ありそうです。こうなると中国の公文書解読の入門書よりは無意味なくらいにマニアックなオタク本の方が今や社会に対してオープンな感じになってしまいましたね。でも今回はホントに勉強になりました。