水戸黄門体験 悪魔の快楽

殺さずに利用しつくすホトトギス

先日、森の愉快な仲間の一人が博士号を取るってんで東京は本郷なる東大まで出向いてきました。お祝いの宴会というのに出てみると、当たり前とはいえ、参加者が全て東大博士課程の秀才と本物の東大教授の先生ばかりです。小生一人が謎の遊び人というワケにも行かないので仕方なく博士論文執筆中との触れ込みで参りました。あたかも何処かのケチな私立大学で講師でもやってるかのような雰囲気を漂わせながら好きな話を好きなように話していたら、「蛯原さんの○○学の知識、専門外の人とは思えません」などと言ってくれる優しい人物まで出てきて、なにやら素人ではない人間と勘違いしてもらえました(少し有頂天な気分です)。このときは小生も運よく学者のハシクレか何かと思われたばかりに話の仲間に入れて貰えたものの、ただの素人で乱入した日にゃ同じ人間が同じように扱って頂けたものやら、それを考えると少々ゾッとします。こんな感じで身分がモヤモヤしたままで知らない相手と接する水戸黄門体験というのはベラボーに気持ちよいばかりでなく思わぬメリットも得られるもんです。しかしベラボーな経験というのは簡単には出来ません。かつて三
味線職人と身分を偽って知らない街に飲みに行ったらホントに三味線
もってこられて往生こいたこともありました。やはり同じ遊ぶなら水戸黄門式に徹底的に下手(したで)
に出る方が簡
単だし面白い体験にもなります。なせなら下手(したで)に出た方が相手の本性が現れやすいからです。そうゆう意味では特に香港での究極の水戸黄門体験は悪魔的な快感さえ伴うベラボーに気持ちいいものでした。たまたま宿で出会った日本人旅行者三人と朝から晩まで遊んでいたのですが、二日目に絵にかいたような自慢話をする野郎が仲間に入りました。もう自分は中国語ペラペラで、そのお陰で中国ではオイシイ経験ばかりだったとか、語学が出来ない人間は可哀想だとか。おまけに中国事情も知り尽くしているというので、まあ少しは腹が立ちましたが、そりゃ頼りになるということで夜になって一緒にメシを食いに行くことにしました。ところが実際に食堂に行ってみると一人で自分の語学力の自慢を話し続けていた割に野郎は標準中国語も大して話せないことが露見しました。可哀想ですが、ここで秘蔵の印籠を見せびらかすことに決め、本性を表した小生は広東語で皆の注文をホイホイと取ってあげました 。そのときの野郎のツラというのは情けないもんでした。自慢話に完全に参っていた他の仲間も声には出さねど大喜びです。しかし、そのとき判りま
した。この人は意外に
良い人で、あっさり「上には上がいるもんですねー」とか言って自慢話を一切封印しちゃいました。そしてメシのあとは屋台街で楽しくブラブラ遊びました。それにしても小生は人が悪い、いや!考えたら非常にイヤな野郎といえます。何もワザワザそのタイミングで広東語が「できる!」ところを見せつけるとは、見方によっては自慢話野郎よりタチの悪い野郎です。しかも喋っていたのは広東語でも何でもなかったんだから完全に悪魔のような野郎です。そう、そのころの小生の広東語なんて大したもんじゃなかったんです。そして注文のときに小生は単に「ワンタンメン」とか「チャーシャーメン」とか「シウマイ」とか普通の中華の名前をテキトーに並べていただけだったんです。ちなみにタンメン、ギョーザ、チャーハンは香港では通じません。