風水パワー?きかれ運?

一昨日の正午のこと、あまりの暑さに水風呂で冷やしに冷やしたうえジャボジャボになった体のまま猿股一丁という姿になって、いかにも妖しい内容の本に全神経を集中していると、またまた久しぶりに玄関の呼び鈴がピヤヤ〜ンポヨヨ〜ンとマヌケな音を立てます。とにかく手近にある衣服らしい物をかき集め人間の前に出られる姿を作ると、夏の大気に気持ち悪い感じに温められた鉄の扉を嫌な予感とともにオズオズと開けました。ところが!ドアの前には誰もいません。ああ、居留守の術でも使っておけば良かった、などと後悔しつつドアの前で様子を見ていると、やがて知らないお婆さんが現れ、「この辺に○○さんの家がありますかねえ」と訊いてきました。早速お探しの家まで御案内し、改めて妖し気な世界に踏み込んで参りました。
 いやあ、またかいな!実は数週間前にも全く同じことがありました。というより同じような状況を何度となく経験しているんです。つまり訪ねる家が見つからないという人たちがナゼか何人も我が宮殿のドアの前に立つんです。例えば別の階の家を探す人も表札に名前のある隣のドアを探す人も同じく我が宮殿を選ぶかのように物を訪ねに来るんです。そこで訪ねてきた人に興味本位で確かめてみると、やはり最初からウチのドアの前に立ったというのです。
もしや宮殿の扉は世間によくある風水的に「入りやすい店」みたいな「ピーンポーンしやすい」ドアなんでしょうか。それも困りますが、小生はドアの風水パワーの効果とは思いません。むしろ小生自らのヘンな引力のせいだと思うんです。ナゼかというと、とにかく知らない国の知らない街を歩いていても、ヤタラと道を訊かれるんです。絵に描いたような土地っ子に見えるのか、あるいは相当ヒマそうに見えるのか、ヒドい場合には自分が帝都のビル群の間で道に迷っているところに通行人から○○駅はどこですか?なんて訊かれることもありました。もう、教えてもらいたいのはオレサマの方だぁ!何年も前にアジア内陸部の某国に長期滞在していたときにも同様で、特に人通りの多いでもない二階中程にあった小生の部屋は気づけばアパートの案内所みたいになっていました。そこの国の人たちというのが妙で、誰かの部屋を探しているというのに、いきなり「○○さんいるかぁ?」「○○帰ってきたかぁ」とか言ってくるんです。まあ日本でも国外でも困っている人には可能な限り誠実に対応しようと心掛けてきましたが、さすがに「○○いるかぁ」が続くので本気で参ってしまい
ました。こうゆう感じでヤタラと道やら部屋やらを教えていると、思い込みとは自覚しながらもこの世には「モテ運」や「可愛がられ運」なんかと同じような感じの「きかれ運」が存在しまーすっ!と言いたくなってきます。ああ、それで判ったぞ!と今になって気づいたことがあります。よく職質食らうのワケは自分の「きかれ運」のせいだったのかぁ!「きかれ運」には少々疲れてしまいますが、もし貴兄が街で、田舎で、あるいはお花畑の見える河辺なんかで道に迷われたなら、是非とも小生を呼び止めてください。いつでも丁寧に対応いたします。