目撃!ドラマのようなシチュエーション

ある晴れた秋の日の午後です。南関東某所なる小さな町の小さな商店街の、そのまた外れにある小さなお惣菜屋さんでの出来事です。コロッケ買おうかメンチにしよかとケースの前でモジモジ悩んでいたら、金目鯛の干物を買いにきていた見知らぬオバサン(バアサン?)が「お宅の店はホントに安いねぇ!」と妙に大袈裟に誉め出しました。あれぇ、ここの店の干物やウナギは確かに値段の割にはモノがいいというのは事実だが、そんなにハデに誉めるほどの安さでもない。それでも店のオバサンは「ううん!ウチの干物もウナギも本場のだからねぇ、モノはいいよぉ!」と胸をはります。お客のオバサンは言葉を続けます:「アタシんとこじゃ3800円のばっかりだからねぇ、こんなに安いと助かるねぇ。2500円は安いよ」。ついでに「ウチは金目鯛なら豊後高田から取り寄せているでしょう。だから高くなっちゃうんだよね」……、ええっ、そうゆうこと?そうゆうことだったのかぁ!。このオバサンの真の狙いは巧妙に自慢話をブッ放すことだったとか?!昔のドラマやマンガに出てくる典型的な「ザアマスの奥様」が労働人民をバカにする場面みたいな絵に描いた
ような景色です。「あーら
、奥様たち、毎日こんなにお安く済ませていらっしゃるのぉ?、それはそれは家計がおラクざあますわね」。こりゃ今の時代なら女のマウンティング!結局は昔も今も同じような人がいて同じような場面が出来上がるんですねぇ。しかし、こんなん田舎で金目鯛の自慢しても仕方ない。もちろん田舎だから金目鯛が自慢になるんでしょうが、自慢好きな人というのは大体が大抜かりでして、豊後高田市なんて遠方の地名を出すまでもなく、東京では聖地・小田原もしくは静岡県沿岸部こそが金目鯛の本場なんてことを忘れてしまっているワケです。間抜けです。なんだかんだ誰もトクしてません。そもそもその前にマンガでもドラマでもザアマスの奥様というのは楽しくもない毎日を送っていて、心の片隅では生き生きと暮らしている労働人民のカアチャンたちを羨んだりしているのが相場なんです。そしてカアチャンたちも労働人民の直感で薄々それに気づいていたりするんです、まぁそれはさて置き話はお惣菜屋に戻ります。オバサンの強烈な自慢話のお陰でで店は名状しがたい特殊な空気に満たされました。こうゆうときはナゼが重い沈黙が場面全体を支配し、時間の感覚も狂うもので
す。この奇妙な空気が消えるまでの時間が十数秒くらいだったのか1分を超えていたのか全く判りませんが、オバサンが去ると日常の明るいザワめきが店のなかにオズオズと流れ込んできました。ところでお客のオバサンは本場沼津産の鯛の干物を買って帰ったんでしょうか。