満月の夜は怖いし疲れる

東洋では満月は澄みきった心の象徴として愛され、月の光で銀色に照らされた世界は東洋的風情の一つの代表といえます。ただし!確かゲーテのだと思いますがAus Fluegel des Gesangesという詩のなかでも月の光に照らされる夜の花園を謳っているし、ベートーベンやドビュッシー(梨汁どびゅっ!?)も月光をネタに曲を作ったことからも解るように、特に近代前夜の欧州でも月は美しいイメージを帯びていました。しかぁし!そうは言っても基本的に西洋での月のイメージは悪すぎるのでした。満月の明るい夜、町外れの崩れかけた屋敷の二階の窓が開くと、髪を振り乱したオオカミ男なんかが「おぉ、髪をとこう!」とか叫だりするんですから月夜というのは怖いもんだったようです。西洋諸語のLunaticなんていう単語も本来は単に月との関連を表すものなんですが実際にはアタマがヘンになるみたいなニュアンスが付いて回っています。とにかく満月の夜は怖いんです。アタマがヘンになるんです。そんな満月が出ていた昨日の夜8時すぎ、いつもの女から電話がありました。いつもの女は何か腹が立つことや知りたいことがあったりして自分が電話した
いときだけ電話してきます。自分のしたい話をして自分の都合のいい論理を好きなだけ展開して自分を不快にさせた人物をボロカスに罵倒して自分の気が済んだり眠くなったりしたら電話を切るんですが、電話代が惜しいからといって当方から電話するようオネダリしてくるんです。こうゆう人物は他の場所でも日常的に面倒を起こしているというのが相場なんですが、まさに電話で聞かされる話はご近所トラブルに窓口での押し問答に苦情処理係への不満というところです。いわゆるモンスターではありませんが、要する世間でクレーマーとかトラブルメーカーとか通報魔とか呼ばれるタイプの人間なんです。もちろん様々な窓口での対応には腹が立つ部分もありますが、明らかにトラブルを拡大させているのは自分が不快になるや自動的に敵対的な態度を見せてしまうクレーマーさん本人の行動です。こんなの怖いよ怖いよー!!こんなんと貴重な時間を犠牲にしてまで話すというのも不思議に聞こえそうですが、全てはソロバン勘定というもんでして、得にならないことは致しません。まず相手が数少ない女の知り合いであること(ついでに声を張って喋る女が好みのド真ん中なこと)
、また応対拒否して気を使うのも面倒なこと、加えてカウンセリングの訓練になること、それに極めつけ!トラブルメーカーやクレーマーといった特殊な人種を直に観察できることなどの事情から、電話をもらっても結果として当方には案外オトクなんです。さてさて時々クレーマーさんと電話で話してみて判ったことがあります。彼らのアタマの中には自分の利害だけしかなくて、日常的に想定しているのも自分が望む状況だけなんです。だから他人や状況が想定どおりに動かなかったり想定外の損失が発生するのは死んでも許さないんです。なんでまぁ自分の利害には異常なまでに真剣になるのに他人様の利害には絶望的に無関心なのでしょう。もはや人間扱いしているのは自分のみ!しかし実は本当に厄介な点は“押し問答”自体が大好きなストレス解消になっていることです。特定のストレスがストレス解消に役立つことは専門家も認めるところですが、心地よい刺激も所詮はストレスなんですから一時の気分は晴れても実はイライラが溜まるだけです。満月の夜は怖い夜、少しアタマがヘンになります。そして少し疲れる夜です。