中央線の死神

 「中央線の死神」は変な経緯で生まれました。確か3、4年前の秋に、何か中央線をネタにした歌を作れないもんか訊かれたんですが、その場で「飛び込め!飛び込め!」のフレーズが浮かび、ロボット・アニメ風のガツンガツンしたメロディーもすぐ出てきました。しかしそれきりで、続きはいずれ!ということで放置しておきました。それが今年の正月の初めのこと、神降ろしの儀式を行おうと河原に出かけたら、橋を渡っている間に急に曲全体の構成が自動的に組み上がり、橋を渡りきるころには全てのキーワードが一挙に収まるべき場所に自然に収まっていくのでした。これは飛び込み自殺をテーマにしていますが、何やら周りを見渡すと他者への配慮をやめてしまった熱意も好奇心もない死人みたいな連中でイッパイです。こんな人間の世界は死後の暗くて冷たい感じの世界と特に変わったところもないようです。この歌では死神が絶望だけは最後まで阻止しようと色々脅してきますが、むしろ仲間に絶望を薦めるのが生きた人間の方たったりするんですから、この世界もある意味では結構マンガ的でナンセンスな空間かも知れません。旧約聖書の「ヨブ記」なんかのことも思い
出します。悪魔は富豪のヨブを絶望に追い込もうとしますが、
周りの人間たちも結局は絶望的なことしか思い着きません。いや、結果的に絶望することを薦めてしまいます。今の日本は絶望への誘惑に満ちている感じです。常識が絶望という選択を迫るからです。こりゃ死神にでも脅してもらうか、常識を超越するか、ここから脱出するにもマンガ的でナンセンスな道しかないような…





1、飛び込め!飛び込め!こっちへおいで/飛び込め!飛び込め!勇気を出して/冷たい世界で手招きしている/オイラのようになりたいなら/いつもの電車が入ってくるぜ/次の駅まで考えるのも悪くないぜ


2、飛び込め!飛び込め!それでいいなら/飛び込め!飛び込め!全てを捨てて/お前が見つめるレールの先には/安らぎもたらす国などない!/銀の電車が戻って来たぜ/もといた場所に立ってみるのも悪くないぜ


3、飛び込め!飛び込め!もう終わりなら/飛び込め!飛び込め!覚悟を決めろ/お前を見捨てたケチなヤツらに負けたというならいつでも来い!/寂しい電車が走っていくぜ/自分のカタキ取りにいくのも悪くないぜ



……
お前の後ろがつかえているぜ/誰かのために泣いてやるのも悪くないぜ!